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短歌を詠みます。
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日中は、もう9月も下旬だということを反射的に否定したくなる暑さだけれど、日が落ちてしばらくすればやはり外の方が涼しい。

ふと思いついてセブンスターのメンソールを1本持ち出し、眼鏡をかけてベランダに出た。
煙草に火を付けて、それが灰になるまでのあいだ空を見ようと思って。

スモーカーではないけれど、セブンスターには思い入れがあるから、20歳になった時1箱買って、今までに3本くらい消費した。吸ってみたのは1回だけで、後は同じように火を付けて灰にした。
私は煙草を美味いと思う人種ではない。ただ暗闇をゆらゆらと上る煙を見るのだ。

左手に煙草、右手にライターを持って火を付ける。
煙草の先が緋色に染まり、白い紙が少しずつその色にのまれてゆく。

昔は目が良かったけれど、今は近視気味で遠くはよく見えない。星も肉眼より眼鏡をかけた方がよく見える。
向かいのアパートの傍に立っている電柱の丁度延長線上に、星が縦に3つ並んでいる。オリオン座だ。
冬の星座が今の時間に見えるということはやはり季節は動いているのだろう。

煙草がやや短くなってきたので灰を落とす。

そう言えばいつか何故だか、雨が降った後の朝、ベランダのへりに煙草の灰のようなものが落ちていたことがある。
普通に考えれば灰の様なものであって灰でないか、もしくは階上の住人が吸った煙草の灰がここに落ちたか、のどちらかだが、今しがたそこで誰かが煙草を吸って去って行った様な気がして少し気味が悪かった。

こうしてぼうっとしていると、自分のいる点が判らなくなる気がする。存在を規定するものが曖昧になる感触。

だいぶ短くなったので火を消す。念入りに。赤い色が見えなくなるように。ざくざくと。

吸い殻を持って部屋に戻る。そのままゴミ箱には入れずに洗面所に向かい、水で先を濡らしてから捨てる。

眼鏡を掛けた顔を久々に鏡で見ると、思いがけず母親に似ていてどきっとした。最近髪を切ったせいだろうか。
そう言えば私は今、母親が自分を生んだ時と同じ年齢だ。多分こういう瞬間がこれからどんどん増えていくのだろう。

指先からはしばらくセブンスターの匂いがした。

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(あまみやまゆ)
歌人集団「かばん」所属。
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