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避けられる事故なら避けたかったもう視界の端からめくられている
過ぎ去った蜜月をまだ食んでいる君の頭を後ろから抱く
なぜ首はこうも無防備美しい喉、喉仏、声が聞きたい
私だけが聞いた一単語のためにあなたが使った器官を思う
心臓をひとなでされるときめきが苦しいあなたは在るだけなのに
ねえテレビ見てないでしょう?
「俺のもの」
安寧をマンネリと呼びおとしめた途端すぱっと切れる指先
今日も穏やかな横顔何ひとつ奪わないくれない乱れない顔
すり抜ける視線あなたが見ない火が燃えてこんなにわたし逆立つ
大丈夫私はずっと正気だし君とのことも大事にできる
この日なたにとどまったまま不可逆の光を見つめる嘘でも生きる
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「かばん」2016年5月号・特別作品
・WOMAN
光を浴びる君が光だ駆け引きも予定調和も軽くはじいて
・KILL YOUR SMILE
・en nui
・リボルバー
・とまどい
・MUSK
・ヴィーナス
・STONEFLOWER
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「かばん」2016年4月号
生きていることそれ自体持て余す君がいつももどかしく組む脚
うすあかいあざの光沢逆さまの熱を宿して手先は踊る
身体という断崖に唯一の相棒としてとまらせる蝶
黒いベルベットのドレスをひるがえす心地だ逆襲がはじまる
潜めれば潜めるほどに似るふたり同じ秘密を血になじませて
涼やかな懺悔が欲しい念入りに手薄に君の背筋を奪う
泣く声は聞かずに終わる春雷がぱっと光って全部破った
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「かばん」2015年3月号
消したって気にくわないのは同じこと回る屋内用シュレッダー
胸に繁るはしから青菜はかじられて歯形によって満たされる生
短くて熱い舌です有効に火のないところに煙をたてる
甘言にまもられながら傷ついてベリーソースが肺腑にしみる
ふり向けばたちのぼる城細胞のひとつひとつが私の正体
目の横を伸びている腕ほの暗くあなたと電車に乗るのは二回
さわられた影の先から燃えてゆきこれは前にもやった遊びだ
春先の呼吸はあさい燃え残るわたしもあなたの目をしてわらう
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「かばん」2014年3月号
電源が静かに落ちるいまはもう感受されない棘のいくつか
反論を飲み込むごとにざわついて眼鏡の縁で伸びてゆく蔦
親からの電話にこたえる青白いお前の背後で鳴る誘蛾灯
「あの光るところがそう」と君が指す家のあかりを心にともす
不揃いなお前の文字を何回かなぞった指で自分に触れる
日に透ける髪が見たいなあたたかい場所をたくさん教えてあげる
うすい窓「浴びる」を「光る」
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「かばん」2013年12月号